身体が硬いのは筋肉だけのせいではありません|動きにくい人のための「令和の真向法」第1回
身体の硬さを筋肉だけで考えず、神経・関節・骨盤のつながりから見直す「令和の真向法」第1回

「昔から身体が硬いから、もう仕方がない」

「歳をとったから、今さら柔らかくならない」

「病気をしてから、身体が思うように動かなくなった」

そんなふうに感じている方はいませんか?

前屈しても手が足に届かない。
股関節が開かない。
正座がつらい。
立ち上がるときに身体が重い。
以前より歩幅が小さくなった。

こうした変化が出てくると、多くの方は、

「筋肉が硬くなったからだ」

と考えます。

もちろん、筋肉の柔軟性はとても大切です。

しかし私は、長年マッサージや操体法を通して身体を見てきて、

身体が動きにくくなる原因は、筋肉だけではない

と考えるようになりました。

身体を動かしているのは、筋肉だけではありません

私たちが身体を動かすとき、筋肉だけが単独で働いているわけではありません。

脳から「動こう」という指令が出る。
神経を通して情報が伝わる。
関節が動く。
骨盤や背骨がそれに合わせて動く。
筋肉や腱が力を出したり、伸びたり縮んだりする。

こうした働きが、お互いにつながって一つの動作を作っています。

脳・神経
↓
関節
↓
骨盤・背骨
↓
筋肉・腱

例えば「前屈する」という簡単な動作ひとつを考えてみましょう。

太ももの裏側の筋肉が柔らかいだけでは、十分ではありません。

股関節が曲がる。
骨盤が前へ傾く。
背骨が動く。
神経が周囲の組織に対して無理なく動く。
そして身体が「ここまでなら動いても大丈夫」と受け入れる。

こうした働きが重なって、初めて身体は自然に前へ倒れていきます。

ですから、

「前屈できない=太ももの裏の筋肉が硬い」

と、一つの原因だけで考えなくてもよいのです。

身体の硬さは筋肉だけではない|神経・関節・骨盤から考える令和の真向法
身体の硬さを筋肉だけで考えず、神経・関節・骨盤・背骨・筋肉のつながりから見直す「令和の真向法」

「身体が硬い」のではなく「動きのつながり」が悪くなっているのかもしれません

同じように「身体が硬い」と感じている人でも、実際の状態は一人ひとり違います。

筋肉の張りが強い人。
股関節がうまく動かない人。
骨盤を前後に動かすことが苦手な人。
痛みへの不安から、無意識に身体へ力を入れている人。
病気や入院などをきっかけに、大きな動きをしなくなった人。

つまり、

身体そのものが硬いのではなく、身体全体の「動きのつながり」が悪くなっている

場合もあるのです。

このように考えると、

「私は昔から硬い体質だから仕方がない」

と、最初から諦める必要はありません。

なぜ数分の運動で前屈が変わる人がいるのでしょうか?

ここが、とても面白いところです。

足首を何回か動かす。
骨盤を前後にゆっくり動かす。
軽く力を入れてから、ストンと脱力する。
神経を強く引っ張らず、ゆっくり滑らせる。

こうした簡単な動きをしたあと、もう一度前屈してみると、

「あれ? さっきより前へ行く」

「さっきより楽に倒れる」

という変化が出る人がいます。

当然ですが、数分で筋肉そのものが急に長くなったわけではありません。

関節の使い方が変わった。
骨盤が動きやすくなった。
筋肉の余計な緊張が減った。
神経系への刺激や身体の感覚が変わった。

そうした複数の要素が関係している可能性があります。

つまり身体には、

「まだ使えていない、動ける範囲」

が残っているのかもしれません。

「私は硬い」ではなく「まだ使えていない」

私は、この言葉の違いをとても大切にしたいと思っています。

「私は身体が硬い」

と言ってしまうと、それが自分の体質であり、変えられないもののように感じます。

しかし、

「まだうまく使えていないところがある」

と考えたらどうでしょう。

少し希望が出てきませんか?

昨日より立ちやすい。
昨日より前屈が楽。
昨日より少し歩きやすい。

そんな小さな変化を積み重ねることはできます。

私が忘れられない「1ミリ」の話

以前、治療家の先輩から聞いた言葉があります。

慢性疾患で長い間苦しみ、身体を動かすことさえ大変になっている方を前にして、その先輩はこう話していました。

「可動域がたった1ミリ変わっただけで、その人がどれだけ楽になれるか。想像できるか?」

その言葉を、私は今でも覚えています。

元気な人にとっての1ミリは、とても小さな変化かもしれません。

しかし、身体を動かすことそのものに苦労している人にとっては、その1ミリが、

少し楽に立ち上がれる。
少し手が伸ばしやすくなる。
少し歩きやすくなる。
少し自分でできることが増える。

そんな大きな意味を持つことがあります。

だから私は、真向法でも大きな変化だけを求める必要はないと思っています。

始める前より、少し楽に動けた。

それが、あなたの「自分の1ミリ」。

スポーツの世界では、わずかな差が大きな結果につながることがあります。

健康づくりでも同じように、ほんのわずかな変化を大切にしたいと思います。

他人の180度開脚より、自分の1ミリ。

この「自分の1ミリ」を見つけることが、身体を動かし続ける力になるのではないでしょうか。

真向法を「筋肉を伸ばす体操」だけで考えない

真向法には、昔から4つの基本体操があります。

たった4つの動きです。

しかし、その4つをよく見てみると、

足首。
膝。
股関節。
骨盤。
背骨。
そして呼吸。

身体のさまざまな場所を使っています。

そこで私は真向法を、

「硬い筋肉を無理に引っ張る体操」

としてだけではなく、

「身体全体の動きのつながりを取り戻す体操」

として、もう一度見直してみたいと思っています。

そこへ、

神経の滑りを利用する方法。
筋肉に軽く力を入れてから脱力する方法。
骨盤や関節を先に動かす方法。
操体法のように、無理な方向へ押し込まず、動きやすい方向を利用する考え方。

こうした現代の身体の見方を加えていきます。

このシリーズでは、その考え方を、

「令和の真向法」

と呼んでみたいと思います。

これは公益社団法人真向法協会が提唱する公式な新理論ではありません。

昔から受け継がれてきた真向法を大切にしながら、私自身が長年身体を見てきた経験と、現在の運動科学や神経の考え方を重ねて考えてみようという試みです。

目標は「4つのポーズを完成させること」ではありません

ここは、とても大切です。

脚が大きく開かなくても大丈夫。
前屈して頭が床につかなくても大丈夫。
第4体操で背中が床につかなくても大丈夫です。

最初から、

「正しい完成形までできなければ意味がない」

と考える必要はありません。

まず大切なのは、

「始める前より、少し楽に動けた」

という変化です。

「さっきより怖くない」
「さっきより力が抜ける」
「さっきより楽に動ける」

そんな小さな変化を大切にしたいと思います。

高齢の方、病気で動きにくくなった方へ

「床に座れないから真向法はできない」

そう思う必要もありません。

床に座れなければ、椅子を使う。
膝が深く曲がらなければ、クッションを使う。
前屈できなければ、まず骨盤を前後に動かしてみる。

4つ全部できなくても構いません。

今できる一つから始めればよいのです。

私がこれから考えていきたい真向法では、

「できないことを頑張る」のではなく、「できる動きを使って、できることを少しずつ増やす」

ことを大切にします。

その変化が1センチでなくても構いません。

1ミリでも、自分にとって楽になったのなら、それは大切な変化です。

なお、病気の治療中の方、強い痛みやしびれがある方、転倒しやすい方などは無理に行わず、必要に応じて主治医などに相談しながら行ってください。

「令和の真向法」で大切にしたい6つの流れ

これからこのシリーズでは、身体を次のような順番で見ていきます。

感じる
↓
ほどく
↓
つなぐ
↓
動く
↓
覚える
↓
変わる

いきなり無理に伸ばすのではありません。

まず、

「今、自分の身体はどこが動きにくいのだろう?」

と感じるところから始めます。

そして神経、関節、骨盤、筋肉などに無理のない刺激を入れて、もう一度同じ動きをしてみます。

少し動きやすくなった範囲を繰り返し使う。

そして、その動きを少しずつ身体に覚えてもらう。

それを積み重ねて、日常生活でも自然に動きやすい身体を目指していきます。

まずは「自分の1ミリ」を見つけてみてください

真向法を始めるために、身体が柔らかい必要はありません。

むしろ、

「私は身体が硬い」
「もう歳だから」
「病気をしてから動きにくくなった」

と思っている方にこそ、知っていただきたいと思っています。

完成した形を目指す必要はありません。

まず、今の身体で一度動いてみる。

そのあと少し身体に働きかけて、もう一度同じ動きをしてみる。

そこで、

「あれ? さっきより少し楽だ」

と感じられたら、それが第一歩です。

それが、あなたの「自分の1ミリ」です。

身体の硬さは、筋肉だけの問題ではありません。

4つの動きで、神経・関節・骨盤をつなぎ、
しなやかに動ける身体へ。真向法。

次回 第2話

「なぜ数分で身体が柔らかくなることがあるのか?」

筋肉そのものが急に長くなったわけではないのに、なぜ前屈や開脚が変わることがあるのでしょうか。

次回は、神経・関節・骨盤・筋肉、そして身体を守る仕組みという視点から、できるだけ分かりやすく考えていきます。

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