
身体を動かすのではなく、身体が動ける道をつくる
真向法というと、
「もっと前に倒れなければ」
「もっと身体を柔らかくしなければ」
と思ってしまいがちです。
しかし最近、私は少し違う見方をするようになりました。
身体を無理に動かすのではなく、身体が自然に動ける道をつくる。
これが、これからの「令和の真向法」で大切なのではないかと思っています。

操体法は「楽に動ける逃げ道」を見つける
私は30年以上、操体法を施術に取り入れてきました。
操体法では、左右・前後など身体を動かしてみて、動きにくい方向へ無理に押し込むのではなく、より楽に動ける方向へ身体を誘導していきます。
すると一つの関節だけが動くのではなく、足、骨盤、背骨、肩、首へと動きが連動していきます。
私はこれを、身体が「エネルギーの流れやすい逃げ道を自分で見つけていく」ような感覚として捉えています。
こちらが決めた形に身体を押し込むのではありません。
身体が動きたい方向を邪魔しない。
これが操体法のおもしろいところです。
熟練した操体法はワカメ体操のようになる
操体法も慣れてくると、「右へ動かす」「左へ動かす」という単純な動きではなくなってきます。
身体が気持ちよい方向を探しながら、ねじれたり、揺れたり、波打つように全身へ動きがつながっていきます。
その姿は、私が以前から行ってきた新体道のワカメ体操にもよく似ています。
また、野口整体の活元運動にも、自分の頭で動きを決めるのではなく、身体から出てくる自然な動きを邪魔しないという共通点があります。
もちろん、操体法・ワカメ体操・活元運動が、まったく同じ仕組みという意味ではありません。
しかし私は、どれにも
「身体を動かす」のではなく、「身体が動ける状態をつくる」
という共通した考え方があるように感じています。

筋肉だけでなく「神経が動ける余裕」に目を向ける
ここで、最近私が注目しているのが神経の滑走です。
腕や脚を動かすとき、筋肉や関節だけではなく、神経も周囲の組織に対して少しずつ位置を変えながら動いています。
そこで神経モビライゼーションでは、神経を強く引っ張って伸ばすのではなく、身体の一方を緩めながら反対側を動かすことで、神経が滑るような動きを促していく方法があります。
いわゆる「神経スライダー」です。
これを知ったとき、私は操体法とどこか似ていると感じました。
どちらも、強い力で目的地まで押し込むのではありません。
動きやすい余裕をつくり、その中で身体を動かしていく。
ここが大切なのではないでしょうか。
真向法の前に30秒、やさしく神経を動かしてみる
そこで私は、真向法を行う前に簡単な神経スライダーを取り入れる方法を試しています。
たとえば坐骨神経を意識した動きなら、椅子に座って膝や足首、首を組み合わせながら、神経を強く伸ばし切らない範囲でゆっくり動かします。
3〜5往復程度。
大切なのは、痛みを我慢して伸ばすことではありません。
そのあと、もう一度いつもの真向法を行ってみます。
前より深く曲がったかどうかだけではなく、
- 呼吸が楽になったか
- 力みが減ったか
- 動き始めが軽くなったか
- 元の姿勢へ戻りやすくなったか
こんな小さな変化を感じてみてください。

目標は「奇跡の自分の1ミリ」
以前、治療家の先輩から言われた言葉を、私は今でも覚えています。
「慢性疾患で苦しんでいる人にとって、可動域が1ミリ変わるだけで、どれほど楽になるか想像できるか」
若く健康な人なら、前屈が10センチ深くなったことに価値を感じるかもしれません。
しかし高齢の方や病気などで身体を動かしにくい方にとっては、ほんの少し腕が上がる、足が前へ出る、身体を起こしやすくなるという変化が、日常生活では大きな意味を持つことがあります。
だから私は、真向法でも大きな変化を求めなくてよいと思っています。
始める前より、ほんの少し楽に動けた。
それが、
「奇跡の自分の1ミリ」
です。
身体は本来、動ける道を探している
寝ているとき、私たちは無意識に寝返りをします。
疲れたときには、誰に教えられなくても背伸びをします。
そのとき私たちは、「右に何度動かそう」「この筋肉を何センチ伸ばそう」などとは考えていません。
身体が自然に、そのとき一番必要な動きを探しています。
操体法も、ワカメ体操も、活元運動も、そして神経スライダーを取り入れた令和の真向法も、私にとってはその延長線上にあります。
身体を動かすのではなく、身体が動ける道をつくる。
無理に柔らかくしようとしなくても構いません。
今日の自分の身体の中にある「一番楽に動ける道」を、ゆっくり探してみてください。
そして昨日より1ミリでも楽に動けたなら、それで十分です。
それが、私が考える「令和の真向法」です。
※神経を動かす運動で痛み・しびれが強くなる場合は無理に続けず中止してください。症状が強い場合や持病のある方は、医師や専門家に相談したうえで行ってください。






























