令和の真向法 第3弾|硬いのは筋肉だけ?神経を滑らせてから動いてみよう
筋肉を無理に伸ばす前に、神経をやさしく滑らせてから身体の変化を確認する「令和の真向法」第3弾。

真向法を続けていて、

「どうしても前に倒れない」
「太ももの裏が突っ張る」
「身体が硬いから仕方がない」

そんなふうに感じることはありませんか?

私自身も長い間、

身体が硬い=筋肉や関節が硬い

と考えることが多くありました。

ところが最近、神経の動きを改めて勉強していて、とても興味深いことに気づきました。

それは、

神経も身体の動きに合わせて、身体の中を滑るように動いている

ということです。

今回は真向法の前に30秒ほど行う、

「坐骨神経スライダー」

をご紹介します。

ただし、最初に一番大切なことがあります。

これは、

頑張って神経を伸ばすストレッチではありません。

むしろ、

力まず、止めずに、スルスル動かす運動です。

神経は「伸びる」だけではなく「滑って動く」

神経というと、脳から身体へ信号を伝える「電線」のようなイメージがあります。

しかし神経は、身体の中に完全に固定された電線ではありません。

腕や脚を曲げたり伸ばしたりすると、それに合わせて神経も周囲の組織との間で少しずつ位置を変えます。

身体の動きに合わせて、神経も滑るように移動していると考えると分かりやすいと思います。

このことを知ると、真向法の見方も少し変わってきます。

「筋肉が硬いから曲がらない」とは限りません

たとえば真向法の第2体操。

脚を前に伸ばして前屈すると、

「太ももの裏が突っ張る」

という方は多いと思います。

普通は、

ハムストリングスが硬いから前屈できない

と考えます。

もちろん、筋肉の柔軟性も大切です。

しかし、膝を伸ばして身体を前へ倒す動きでは、筋肉だけではなく、坐骨神経を含めた神経系にも影響が加わります。

ですから身体の「硬さ」を、すべて筋肉だけの問題として考える必要はないと思います。

筋肉・関節・神経・呼吸。

それらが一緒になって、その人の「動きやすさ」を作っています。

筋肉が伸びると、神経は滑らなくなるの?

ここは今回、私自身も改めて考えたところです。

膝を伸ばせば、太ももの裏の筋肉も伸びます。

足首を起こせば、ふくらはぎにも伸びる感じが出ることがあります。

では、

筋肉がストレッチされると、神経のスライドは妨げられるのでしょうか?

必ずしもそうではありません。

筋肉が軽く伸びながら、その中で神経も移動することはあります。

問題なのは、

「もっと伸ばそう」と頑張りすぎること

です。

膝をいっぱい伸ばす。
つま先を強く反らす。
身体を強く前へ倒す。
首まで強く曲げる。

このように全身を強く張ってしまうと、

神経を滑らせる動き

というより、

神経に張力を加える動き

に近づいていきます。

今回の目的は、

伸ばすことではなく、スルスル往復させること。

です。

神経スライダーと神経ストレッチは違います

今回行うのは、

「神経スライダー」

と呼ばれる考え方です。

長いロープを想像してみてください。

右側を少し引くときには、左側をゆるめる。

今度は左側を少し引きながら、右側をゆるめる。

そうすると、ロープ全体を強く引っ張らなくても、

スルスル、スルスル

と行ったり来たりできます。

神経スライダーも、このイメージです。

真向法の前に「30秒・坐骨神経スライダー」

椅子に座り、膝と首を交互に動かす30秒・坐骨神経スライダーのやり方
①と②を交互に、止めずにゆっくり往復します。まずは3〜5往復から。

今回のやり方で最も大切なのは、

①と②を別々に行わないこと

です。

①を5回行ってから、②を5回行うのではありません。

① → ② → ① → ②

と交互に動かします。

①と②で1往復

と考えます。

① 膝をゆっくり伸ばしながら、顔を少し上げる

安定した椅子に座ります。

そこから片方の膝を、ゆっくり前へ伸ばします。

それと同時に、

顔をほんの少し上げます。

首を大きく反らす必要はありません。

つま先は、

軽く起こす程度。

力いっぱい自分の方へ反らしません。

ふくらはぎや太ももの裏に、

「少し伸びているな」

という感覚がある程度なら構いません。

しかし、

「もっと伸ばそう」「効かせよう」

とはしません。

しびれやビリビリする感じが強くなるところまで動かす必要はありません。

② 膝をゆっくり曲げながら、あごを軽く引く

次に、膝をゆっくり曲げて戻します。

それと同時に、

あごを軽く引きます。

ここでも、

「首の後ろをしっかり伸ばそう」

とは考えません。

あごは軽く。

視線が少し下を向くくらいで十分です。

そして、

背中も無理に丸めません。

膝を曲げるのに合わせて、

足首・つま先の力もゆるめます。

5秒・10秒止める必要はありません

ここは、今回とても大切なところです。

神経スライダーは、

伸ばした姿勢を長く止めておくストレッチではありません。

①の姿勢で5秒、10秒と頑張って止める必要はありません。

目安としては、

①へ2〜3秒くらいかけて動く

そして、そのまま、

②へ2〜3秒くらいかけて戻る

くらいで十分です。

端まで行ったところでも、長く止まりません。

一瞬方向を切り替えるくらいで構いません。

大切なのは、

止めて伸ばすことではなく、往復すること

です。

呼吸に合わせると分かりやすい

秒数を数えるのが面倒な方は、

呼吸に合わせる

のも一つの方法です。

① 膝を伸ばしながら自然に吸う

そして、

② 膝を曲げながら自然に吐く

これで、

一呼吸=1往復

です。

ただし、

「大きく吸わなければ」
「長く吐かなければ」

と頑張る必要はありません。

一番大切なのは、

呼吸を止めないことです。

最初は3〜5往復で十分です

以前の説明では、

5〜10回

としていました。

しかし、高齢の方や病気から回復途中の方を考えると、最初から10回を目標にする必要はないと思います。

まずは、

①⇄②を1回として3〜5往復

これで十分です。

1往復を4〜6秒くらいで行えば、5往復でおよそ20〜30秒。

ですから、

「30秒・坐骨神経スライダー」

と覚えておくと分かりやすいと思います。

30秒ぴったり行う必要はありません。

いつ5〜10往復に増やすの?

基準は、

「もっと伸びるようになったか」

ではありません。

身体の反応を見ます。

  • 痛みやしびれが増えない
  • 終わったあと脚が重くならない
  • 少し動かしやすく感じる
  • 運動後に症状が強く残らない
  • 翌日に悪化しない

そんな状態であれば、

3回 → 5回 → 7回 → 10回

というように、少しずつ増やしていけばよいと思います。

逆に、

ビリビリ感が強くなる。
脚が重くなる。
終わったあともしびれが残る。

そんな場合は、

回数を増やすのではなく、動かす範囲を小さくします。

何回できたかより、

「終わったあと身体がどう感じているか」

を大切にします。

高齢者や病気上がりの方ほど「頑張らない」

私はここを、特に大切にしたいと思っています。

「ストレッチ」と聞くと、身体が硬い方ほど、

もっと伸ばさなければ

と思ってしまいます。

そして高齢の方や病気から回復途中の方ほど、一生懸命やろうとしてしまうことがあります。

しかし今回の運動では、

頑張らないことも練習の一つ

です。

膝が完全に伸びなくても構いません。

つま先が少ししか上がらなくても構いません。

顔もほんの少し動けば十分です。

小さく。
ゆっくり。
呼吸をしながら。

まずは3往復でもいいのです。

もう一度、真向法をしてみる

坐骨神経スライダーが終わったら、もう一度、真向法をしてみます。

このとき、

「何センチ深く曲がったか」

だけを見ないでください。

それよりも、

「さっきより少し楽」
「太ももの裏の突っ張りが少ない」
「力まなくても動ける」
「呼吸しやすい」

そんな小さな変化を探します。

大きく変わらなくても構いません。

30秒で柔らかくなったら、筋肉が伸びたのでしょうか?

ここが、とても面白いところです。

坐骨神経スライダーを数回行っただけで、

「さっきより前屈しやすい」

と感じることがあります。

では、その20秒、30秒の間に筋肉そのものが急に長くなったのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。

神経と周囲組織の動き。
筋肉の緊張。
関節の動き。
呼吸。
身体が感じている安心感。

いろいろな要素が変化した結果かもしれません。

ですから、

前屈が変わった=神経だけが原因だった

と決めつけることもできません。

身体は、

筋肉・関節・神経・呼吸・感覚

が一緒になって動いているからです。

「筋肉の張り」と「神経の影響」を観察してみる

一つ、自分の身体を観察する方法があります。

前屈して太ももの裏に軽く張りを感じたところで、無理のない範囲で、

顔をほんの少し上げたり、戻したり

してみます。

もし首の位置を少し変えただけで脚の張り方まで変化するようなら、筋肉の柔軟性だけでは説明しにくい要素も関係しているかもしれません。

ただしこれは、

病気を診断するための検査ではありません。

あくまで、

自分の身体の反応を観察する方法

です。

無理に伸ばさない――これも令和の真向法

昔の柔軟体操では、

「硬いならもっと伸ばす」
「痛くても我慢する」

という考え方もありました。

しかし身体は、強く押せば押すほど素直に動いてくれるとは限りません。

嫌がっている身体をさらに押し込めば、かえって力が入ることもあります。

そこで私は、

伸ばす前に、まず動ける環境を作る

という考え方を大切にしたいと思っています。

一方を少し張ったら、反対側はゆるめる。

そして今度は反対へ。

逃げ道を残しながら、スルスル動く。

これは、私が長年行ってきた操体法の考え方とも、どこか通じるものを感じます。

目標は「もっと曲がる」ことではありません

真向法をしていると、

「もっと深く曲がらなければ」
「床まで行かなければ」

と思ってしまうことがあります。

でも、それが目的になると、自分の身体から出ている小さな信号を見失ってしまいます。

以前、治療家の先輩から聞いた言葉があります。

慢性疾患で苦しんでいる人にとって、

身体がほんの1ミリ楽に動けることが、どれほど大きな意味を持つか。

最近、その言葉を改めて思い出しています。

昨日より1ミリ。
始める前より1ミリ。

実際の角度が同じでも、

「少し楽になった」

なら、それも立派な変化です。

私はこれを、

「奇跡の自分の1ミリ」

と呼びたいと思います。

令和の真向法は「身体との対話」

真向法には長い歴史があります。

だからこそ、昔からある4つの体操を大切にしながら、現在分かってきた身体の仕組みも取り入れて、

もっと安全に。
もっとやさしく。
もっと長く続けられる方法へ。

私はそんな真向法を考えていきたいと思っています。

筋肉だけを見るのではなく、
神経も見る。
関節も見る。
呼吸も見る。

そして何より、

自分の身体の反応を見る

頑張って伸ばすのではなく、

一度やさしく動かしてから、もう一度動いてみる。

大きく変わらなくても構いません。

ほんの少し楽になった。
ほんの少し呼吸しやすくなった。
ほんの少し動きやすくなった。

その小さな変化を大切にしてみてください。

それが、

あなたの「奇跡の自分の1ミリ」

かもしれません。

大切な注意

坐骨神経スライダーは、

痛みやしびれを我慢して行う運動ではありません。

ビリビリする痛みが強くなる。
しびれが増える。
脚に力が入りにくくなる。
運動をやめても症状が強く残る。

そのような場合は中止してください。

また、急に脚の力が落ちた場合や、排尿・排便の異常、股の周囲の感覚異常などがある場合は、セルフケアより医療機関での評価を優先してください。

「たくさんやれば早く良くなる」ではありません。

小さく。
ゆっくり。
呼吸を止めず。
痛みやしびれを追いかけない。

これも、

「令和の真向法」

で大切にしたい考え方です。

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