腰痛の原因は違っても、なぜ最後はインナーマッスルなのか? 高齢者の「動ける身体」にも大切な理由
腰痛の有無にかかわらず、体幹を安定させながら自然に動ける身体を保つことが大切です。

腰痛の原因は違っても、なぜ最後は「インナーマッスル」なのか?――腰を安定させて動く力を取り戻す

腰痛というと、

「骨が悪いのでは?」
「椎間板がつぶれているから?」
「脊柱管狭窄症だから?」
「筋肉が硬いから?」

など、いろいろな原因が思い浮かびます。

実際、腰痛の原因は一つではありません。

ところが、腰痛について勉強していくと、原因が違っていても最終的に、

「腰を安定させながら動く力を取り戻す」

というところへ行き着くことが少なくありません。

そこで重要になるのが、

腹横筋や多裂筋などを中心とした、体の深い部分の筋肉――いわゆるインナーマッスルです。

今回は、

「腰痛の原因はそれぞれ違うのに、なぜインナーマッスルが大切なのか?」

を、高齢の方にも分かりやすく説明したいと思います。


腰痛の原因は一人ひとり違います

一口に「腰痛」といっても、その状態はさまざまです。

たとえば、

・筋肉や筋膜への負担
・椎間関節への負担
・椎間板への負担
・脊柱管狭窄症
・坐骨神経痛を伴うもの
・長時間同じ姿勢を続けたことによるもの
・運動不足や加齢による体力低下

などがあります。

さらに、腰の画像検査をしても、必ずしも痛みの原因が一つに決められるとは限りません。

英国の公的医療サービスであるNHSも、腰痛にはさまざまな原因があり、原因がはっきりしないこともあると説明しています。

つまり、

「腰痛=この一つの原因」

と単純には考えられないのです。


では、原因が違うのになぜインナーマッスルなのでしょう?

ここが今回、一番お伝えしたいところです。

腰痛の原因そのものは違っていても、

「腰を安定させながら体を動かす」

という働きは、どんな人にも必要だからです。

人間は、

立つ
歩く
座る
立ち上がる
物を持つ
体をひねる

という動作をするとき、腰の骨だけで体を支えているわけではありません。

背骨の周囲を筋肉が支え、体幹を安定させながら手足を動かしています。

この「体の土台作り」に関係するのが、体の深いところにある筋肉です。


インナーマッスルは「天然のコルセット」のようなもの

代表的なのが、

腹横筋(ふくおうきん)
多裂筋(たれつきん)

などです。

腹横筋は、お腹の周囲をぐるっと包むように存在しています。

多裂筋は、背骨のすぐ近くにあり、背骨を細かく安定させる働きを担っています。

これらの筋肉は、大きな力を出すというより、

「動く前に体を支える」
「腰がぐらつきすぎないようにする」

といった働きをしています。

イメージとしては、

「自分の筋肉で作る天然のコルセット」

と考えると分かりやすいでしょう。

ただし、インナーマッスルだけを鍛えれば、すべての腰痛が治るという意味ではありません。

大切なのは、

腰を安定させる筋肉を働かせながら、体全体を動かせるようにすることです。


大きな筋肉だけを鍛えればよいわけではありません

筋力トレーニングというと、

「腹筋を何十回もする」
「背筋を鍛える」
「スクワットをする」

というイメージがあります。

もちろん、これらの大きな筋肉も大切です。

しかし、体の表面にある大きな筋肉だけが頑張って、体の深い部分の筋肉がうまく働いていないと、

体を固めて動く

ようになってしまうことがあります。

すると、

「立ち上がるときにヨイショとなる」

「歩き始めがぎこちない」

「方向転換が苦手」

「長く立っていると腰が疲れる」

「ちょっとした動作が怖い」

という状態につながっていきます。

ですから、

大きな筋肉を強くすることと、

深い筋肉を働かせることは別の問題です。

両方が協力して働くことが大切なのです。


腰痛がなくても、高齢になると「腰を安定させる力」は大切です

ここは、腰痛の患者さんだけではありません。

施術をしていると、高齢の方の中には、

「腰は別に痛くないんです」

という方もたくさんいらっしゃいます。

ところが歩いてもらうと、

・歩幅が小さい
・足が上がりにくい
・スタスタ歩けない
・立ち上がりが遅い
・方向転換に時間がかかる
・体がふらつく

ということがあります。

この場合、

「腰痛がないから腰には問題がない」

とは限りません。

体幹を安定させて、その上で手足を自由に動かす能力そのものが、年齢とともに低下している可能性があります。

そこで私は、

「痛みを取るためだけではなく、いつまでも動ける体を作るためにも、体幹を働かせることが大切」

だと考えています。


「筋肉を鍛える」より先に「筋肉を使えるようにする」

ここも非常に重要です。

私は、

「インナーマッスルを鍛える」

という言葉よりも、

「眠っている筋肉を目覚めさせる」

「使えていない筋肉をもう一度使えるようにする」

という表現のほうが、高齢の方には分かりやすいと思っています。

いきなり強い腹筋運動をする必要はありません。

まずは、

呼吸する
お腹を軽く引き締める
骨盤をゆっくり動かす
手足を動かしても腰を安定させる

といった、ごく小さな運動から始めます。

筋肉は、

「強いか弱いか」だけではなく、
「必要なときに働いてくれるか」

が大切なのです。


腰痛だからといって、ずっと安静にする時代ではありません

昔は、

「腰が痛かったら、できるだけ寝ていなさい」

と言われることもありました。

しかし現在は、一般的な腰痛では、長期間寝たままでいるのではなく、状態に合わせてできる範囲で日常生活や活動を続けることが勧められています。

英国の公的医療サービスNHSも、腰痛のセルフケアとして、

可能な範囲で活動を続け、日常生活を続けること

を紹介しており、長期間ベッドで安静にし続けることは勧めていません。

また英国NICEの腰痛・坐骨神経痛ガイドラインでも、状態に応じたセルフマネジメントや活動を続けるための助言、運動などが重要な選択肢として位置づけられています。

もちろん、

「痛くても我慢して運動しなさい」

という意味ではありません。

無理をするのではなく、

「できる範囲で、少しずつ体を使う」

ことが大切なのです。


そこで「温めてから動かす」という考え方

では、

「腰が硬くて動きにくい」
「筋肉がこわばっている」
「動き始めがつらい」

という方はどうすればよいでしょうか。

ここで私は、

「温める」→「ゆるめる」→「動かす」

という順番が非常に取り入れやすいと考えています。

実際、NHSも腰痛のセルフケアの一つとして、温熱パックや湯たんぽなどを使い、

関節のこわばりや筋肉のけいれんを和らげる方法

を紹介しています。

ここで大切なのは、

「温めれば腰痛の原因そのものが治る」

と言っているのではないということです。

温熱は、

筋肉がこわばっている
体が冷えて動き出しにくい
腰の周囲を動かすのが怖い

といった方が、

「体を動かしやすい状態を作る」

ための一つの手段として利用できます。


温めるだけでも、運動するだけでもありません

私は施術をしていて、

温めることと動かすことは、非常に相性が良い

と感じています。

温めて気持ちよくなっただけで終わるのではなく、

そのあとに、

呼吸をする
骨盤を動かす
お腹を軽く働かせる
脚を動かす
立つ
歩く

というところまでつなげていく。

つまり、

温める

筋肉の緊張をゆるめる

動きやすくする

インナーマッスルを働かせる

立つ・歩くといった日常動作につなげる

この流れが大切だと思っています。


腰痛の原因探しだけで終わらない

もちろん、腰痛の原因を考えることは大切です。

椎間板なのか。

関節なのか。

筋肉なのか。

神経なのか。

しかし、それだけにとらわれてしまうと、

「私の腰は壊れているから動かしてはいけない」

と思ってしまう方もいます。

大切なのは、

「原因を考えること」と「これから動ける体を作ること」は別の問題

だということです。

原因が何であっても、

腰を安定させながら手足を動かす能力

は、日常生活を送るうえで必要です。

だからこそ、

腰痛の原因は違っても、

最後は「腰を安定させて動く力を取り戻す」

というところへつながっていくのです。

そして、その土台の一つになるのが、

インナーマッスルです。


腰痛のない高齢者にも大切な考え方です

これは腰痛治療だけの話ではありません。

年齢を重ねても、

自分の足で立つ。

自分の足で歩く。

転ばない。

買い物へ行く。

旅行へ行く。

好きなことを続ける。

そのためには、

単純に「筋肉量が多い」だけでなく、

必要な筋肉が必要なときに働く体

を維持していくことが大切です。

「腰は痛くないけれど、最近スタスタ歩けなくなった」

という方こそ、

体を支える深い筋肉をもう一度働かせる練習をしてみる価値があると思います。


まとめ 原因は違っても「動ける腰」を作ることは共通している

腰痛にはさまざまな原因があります。

ですから、

「すべての腰痛はインナーマッスルが原因」

ということではありません。

しかし、

・立つ
・歩く
・起き上がる
・物を持つ
・体をひねる

こうした日常動作を安全に行うためには、

腰を安定させながら動く力

が必要です。

だから私は、

「腰痛の原因は違っても、最後はインナーマッスルを働かせることが大切になる」

と考えています。

さらに高齢になると、

痛みがなくても、この「体を安定させて動く力」は少しずつ低下していきます。

腰痛改善だけではありません。

これからも自分の足で元気に歩き続けるための体づくり。

その意味でも、インナーマッスルを意識した運動は大切です。

そして、体が硬く動きにくい方の場合は、

温めて動きやすい状態を作り、そのあとで無理のない運動を行う。

祐気堂マッサージでは、この

「温める・ゆるめる・動かす」

という流れを大切にしています。


次回は実践編です

では実際に、

腰痛のある方や高齢の方が、無理なくインナーマッスルを働かせるには、どんな運動をすればよいのでしょうか?

次回は、

「高齢者にもできる5つのインナーマッスル鍛錬法」

として、

寝たままできる簡単な運動から、立つ・歩くための運動まで、イラストを使って分かりやすくご紹介します。

さらに、

「運動しにくいところを温めてから動かす」

という、毎日続けやすい温熱セルフケアについてもお話しします。

「痛みを取る」だけではなく、

これから先も、自分の足で元気に動き続けるために。

次回は、その具体的な方法をご紹介します。

※腰痛には、骨折・感染症・腫瘍など、運動やセルフケアより医療機関での診断を優先すべき場合もあります。急激に悪化する強い痛み、両脚のしびれや筋力低下、排尿・排便の異常、発熱を伴う腰痛などがある場合は、自己判断せず医療機関へご相談ください。NHSもこうした症状を緊急評価が必要なサインとして挙げています。

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